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ARTIST STATEMENT - アーティストステートメント

 私のデジタルインスタレーション作品は仏教の概念である諸行無常を反映しています。これは我々を取り巻く世界に内在する非永続性と、熱力学でいうエントロピーとの複合的な概念です。諸行無常もまた物事は絶え間なく流動的であることを示唆し、また調和のうちに働きます。それはまさに全ての生物が成熟した形状を持つと同時に劣化が始まるかのように、エントロピーの結果は避けられない運命として訪れるのです。そのような形で私は作品内で諸行無常とエントロピーに関する私の解釈を表現しようと試みています。また私はフランスの哲学者ジャン=ポール・サルトル (1905-1980)が「物としての画像の事と、イメージもしくは何らかの表現としての画像の事の間で (Chaplin 129)」それを識別する際の造語として用いたアナロゴンという言葉を用い、作品中ではデジタル時代においての彼のコンセプトを探求しています。

エネルギー資源を担保として永久的と唱われる半永久的なデジタルメディアと一時的で脆弱な身体との間には差異があります。デジタルイメージは伝統的な意味での実体を持ちませんが減衰しないと信じられており、それはデバイスを通して音や光として表出します。一方、成長し環境に適応する機能を有した身体は否応なしに破壊の運命を辿ります。秩序と無秩序や構築と衰退の推移は目立たないかもしれませんが、人間の身体の劣化のプロセスは生命そのものの存在を明らかにします。そこで私はデジタルメディアの不朽の性質と、有機生命の死を免れない性質との関係を模索してきました。

私はインスタレーションの中で、幻想的な空間を創出し意図的に実在と不在の差異を曖昧にすることで、個々の訪問者がこの2つの区別を熟考することを意図して表現しています。訪問者はそれらの繋がりを見つけながら、時の経過とともに空間内のデジタル画像、物理オブジェクトの区別の認識に至ります。一方で私は空間に意図的にデバイスを設置し、鑑賞者自らの身体性の拡張としてデジタルイメージを見ることを促します。その時デジタルイメージは痕跡や記憶として動作し自身の経験を思い起こすのです。またそれをトリガーとして機能させ、鑑賞者自身による個人的な物語の創出を誘導することに興味があり、それがデジタルイメージと物理オブジェクトの複雑な区別や、人間の身体の関係性の探求を動機づけてくれると考え制作しています。

引用資料 Chaplin, Adrienne Dengerink. “Phenomenology: Merleau-Ponty and Sartre.” The Routledge Companion to Aesthetics. Third Ed. Berys Gaut and Dominic Lopes. Oxon: Routledge, 2013. 126-136. Print.


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